本年6月、双極性障がい(法律上はそううつ病とされている)、統合失調症、うつ病など病名を特定し、患者の自動車運転を制限する改正道路交通法が施行されました。
また、5月には、双極性障がいを、過失による事故に通常人より重い刑罰を科す理由として認める自動車運転死傷行為処罰法が施行されています。

道交法改正は、非科学的かつ非人道的であると以前よりホームページでコメントしたり、ノーチラス会誌で特集したりしてきました。
今般、日本精神神経学会の法委員会と理事会がねばり強く公安委員会と話し合いを続け、双極性障がいが基本的に運転能力を欠く疾患ではないことを理解してもらえました。それにあわせて免許取得や更新時に必要となる診断書もほぼ全国統一の書式となり、その内容も、かなり当事者の皆さんに有利なものとなりました。

しかし、いまだに当事者の中には、運転免許を手放さなければならなくなったと誤解されている方がいるとお聞きしています。最近、公安委員会が決めた、この法律に関しての診断書の内容を紹介するとともに、間違っても運転免許証の自主返還ということをされないように改めてお願いしたいと思います。

まず、皆さんは自分から進んで公安委員会に双極性障がいその他の精神疾患にかかっていることを申告する必要はありません。免許取得あるいは更新時に以下のような質問票を渡されますが、この時に虚偽の回答をすると罰則を受ける可能性があるので、ここはじっと我慢して正直に回答していただきたいと思います。

質問票の内容
1 過去5年以内において、病気(病気の治療に伴う症状を含みます。)を原因として、又は原因は明らかでないが、意識を失ったことがある。

2 過去5年以内において、病気を原因として、身体の全部又は一部が、一時的に思い通りに動かせなくなったことがある。

3 過去5年以内において、十分な睡眠時間を取っているにもかかわらず、日中、活動している最中に眠り込んでしまった回数が週3回以上となったことがある。

4 過去1年以内において、次のいずれかに該当したことがある。
・飲酒を繰り返し、絶えず体にアルコールが入っている状態を3日以上続けたことが3回以上ある。
・病気の治療のため、医師から飲酒をやめるよう助言を受けているにもかかわらず、飲酒したことが3回以上ある。

5 病気を理由として、医師から、運転免許の取得又は運転を控えるよう助言を受けている。

皆さんのほとんどは、1~4に関して、「いいえ」にチェックできると思いますが、5に関しては、おそらく薬との関連もあり、主治医から注意を受けているものと思われます。そこで正直に「はい」にチェックしなければなりませんが、そうすると診断書が渡されます。診断書は、以下のような内容になっています。

まず、氏名などの記載の次に、病名と総合所見を書く欄があります。
次に安全な運転能力を問う欄があります。ここでは二つの選択肢(アとイ)があり、アは安全な運転能力を欠く症状を呈していない(要約)、でイは同能力を欠く症状を呈している(要約)、です。

ここで主治医がアを選択してくれればよいですが、現時点で躁状態や重症のうつ状態であった場合はアと記載してもらうことは難しいかもしれません。しかし救済措置があり、イの場合も、その下にイ―1という選択肢があります。これが大切です。
イ―1は過去6か月以内に(症状の悪化などの)特別な事情があったのであって、6か月後にもう一度診察し直すことでアに代わるかもしれませんという判断です。これは以前からあったいわゆる保留措置です。この保留措置は何度も使えるので、主治医がアを記載してくれない場合も、イ―1に○をしてもらって、アに○をしてもらえるよう病状が落ち着くまで、何とか保留措置を続けることができないか、よく相談してください。

また、最後の欄には、医師がフリーに記載できる欄がありますので、場合によっては、「これまでの病状から、今後1年は運転可能と思われるが、その後再発する可能性もあるので、1年後に再び判断したい」などと記載してもらうと、数年に1度くらい再発する人も運転免許を持ち続けることが可能となります。

なお、診断書に記入された内容については、ご自身でも十分把握しておくことをお勧めします。内容についてみなさん自身が口頭で質問される可能性があるからです。

いずれにしても、病状をよく知る主治医とよく相談して、免許はなるべく手放さないようにすることが大切だと思います。また、相談する際には、ご自分が実際にどの程度運転するのか。また、居住地によっても事情が違ってくるので、免許が生活する上で必要不可欠であるのかどうかということも最後の欄に記載してもらうことで対応が違ってくると考えられます。しつこいようですが、とにかく主治医とよく相談されてください。

ノーチラス会では、会員の皆さんの具体的に困ったことなどを、メールで質問を受けております。申し訳ありませんが、この件について、電話では対応出来かねますのでご了承願います。

ご参考:(警察庁トップページ>法令・訓令・通達等>新規制定・改正法令・告示>法律)
平成25年6月14日 道路交通法の一部を改正する法律(平成25年法律第43号)

*この資料は、ノーチラス会 鈴木映二理事長のツイートを基に編集、加筆したものです。

pdfファイル
双極性障がいと運転免許について