セルフヘルプ(自助)グループとは、当事者会や家族会などのことです。

1.わだかまりから解放されます

当事者は病気になったことで社会から烙印を押され(病名そのものが烙印となっている場合もあります)、劣等感にさいなまれますが、セルフヘルプグループはそこから解放してくれます。
当事者は感情を押し殺して生活しなければなりません。病気になった悔しさ、病気が理由で受けてきた言われもない屈辱などを誰にもぶつけることができません。そんなわだかまった感情をセルフヘルプグループは解き放してくれます

2.安心感を持てます

双極性障がいのような感情が一定しない病気の方の場合は、周囲の人はどう扱っていいのか戸惑ってしまいます。しかし、当事者同士なら少なくとも経験的に理解できるので、よりうまく受け止めてくれます。
専門家は治療の対象としての病気を熟知していても、人間的に受け入れてはくれません。当事者も自分が人間として受け入れてもらえているかどうか戸惑いますが、相手が当事者であれば安心です。この安心は何物にも代えがたいものです。

3.生活にリズムをつけることができます

例えば、月に一度でも定例会に参加しようと思えば、それまで全く自宅に引きこもっていた生活から卒業できます。事務局の手伝いなどに参加すれば、さらにリズムがつきます。

4.社会参加の機会になります

当事者の方は社会から隔絶されていることが多いので、これは大変重要なことです。人間は社会的な動物です。社会と繋がって初めて人間らしい生活を取り戻していけるのです。Harman博士は、これを社会との再結合と呼びました。

5.情報を得たり、モデルとなる人に出会うことができます

専門家の中には素人同士の情報のやり取りを嫌がる人もいますが、私は意味があると思っています。当事者間ではなるべくいい情報を伝えようという力動が働くと思いますし、小さな人間関係の中ですから相手の人間性も分かります。
病気の症状に対抗する工夫のことを対処方法といいますが、セルフヘルプグループの中で、それを教え合うことができます。個々の当事者は自己流とは言え素晴らしいアイディアを持っているものです。それを生かさない手はないと思います。
病気になった人は、自分の将来がどうなるのかと不安になります。この時、気をうまく克服した人を実際に目の当たりにすることができと、その人を目標として頑張ることもできますし、現実的な方策を立てることもできます。
他者の話を聞く立場になれます。他者を受け入れ、情報を与え、先輩としてモデルとなることもできます。このように他者を援助することによって実は自分自身が最も癒されます(援助による援助)。
そしてセルフヘルプグループ自らが行う調査と研究があります。これは、専門家が行うものとはことなり、生活のニーズから生まれたものですが、方法は科学的に行うことが大切です。そういう意味では専門家と連携することも必要です。

6.認知を再構成できます

認知とはできごとに対する捉え方です。病気になると、それまでの認知では対応できなくなり、人によっては大変歪んだ認知を獲得してしまいます。セルフヘルプグループの中で、それをもう一度作り直すことができます。
アルコールの自助会には「変えられることを変え、変えられないことは受け入れ、その両者を区別する理性を持つ」というモットーがありますが、これなどは新たな認知ともいえます。
認知を再構成すると、新たな生きがいや目的に繋がっていくことがあります。そして、それは取り戻す人生ではなく、新たな出発へと繋がります。一旦どん底を見た人は本当の自分に気がつくことができるのかもしれません。

7.何度か参加するうちにグループ内における役割を担うことができます

最初は椅子の片づけ位からかもしれません。しかし入院中は一方的にサービスを受ける身ですが、些細なことでも自分の労力を提供するという体験は、受動的存在からの脱却の第一歩です。

8.社会の一員として

このような過程を経て、自分自身の存在価値を再認識することができますそして人間が本来持っている権利を自分も持っていることを自覚することができます。そうすると、社会福祉など認められた権利を主体的に利用するきっかけになります
自分だけがたまたまいい薬や主治医に出会って回復すればよいという考えではなく、セルフヘルプグループの仲間、ひいては病気の人すべてが幸せになるにはどうしたらいいかを考え始めます。
みんながよりよく回復していくために、治療や福祉はどうあるべきか、一番よく分かっているはずの当事者として社会を変えていく前向きな活動に繋がります。
障害を持つと健康な自分を失い価値がなくなったかのように感じると思います。双極性障がいや統合失調症のように珍しい疾患では周囲に同じ病気の人もいないので孤独になります。でも、同じ病気にかかった他の人にとっては、あなたの存在が癒しになるのです。病気を持っているというだけで価値があるのです

9.補足

セルフヘルプグループに参加することによって当事者はセルフヘルパー、プロシューマーになれます。セルフヘルパーとは仲間と共に生きていく生き方をしている人を指します。プロシューマーとは、作り出す(プロデュース)と消費する(コンシューム)の造語です。作り出し消費する人、つまり援助の受け手でもあり与え手でもある人になる。セルフヘルプグループでは、仲間を助け、仲間に助けられる存在です。さらには、グループの運営や社会に対してもプロシューマーとなります。

参考:
『セルフヘルプ・グループ~当事者へのまなざし~』(久保紘章著、相川書房、2004)
『セルフヘルプグループへの招待』(岩田泰夫著、川島書店、2008)
その他、世界的権威のKatz博士の論文など

※この資料は、ノーチラス会 鈴木映二理事長のツイートを基に編集したものです。

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セルフヘルプグループの役割、意義